肘部管症候群の治療方法は、症状の重さや進行具合に応じて異なります。軽度な症状の場合、セルフケアや非手術的な治療が効果的なことが多いですが、重度な症状には手術が必要になる場合もあります。ここでは、肘部管症候群の治療方法やセルフケアの方法について詳しく説明します。
1.姿勢の改善と生活習慣の見直し
肘部管症候群の軽度な症状の場合、まずは日常の姿勢を改善することが大切です。肘を頻繁に曲げたままにする姿勢を避け、可能な限り肘を伸ばす時間を増やすようにしましょう。例えば、デスクワークを行う際は、肘を90度以上曲げないように心がけ、リラックスできる姿勢を意識します。また、夜間に寝ている際も肘が曲がらないようにするため、専用の装具(スプリント)を使用するのも効果的です。
2.ストレッチとエクササイズ
定期的に肘部管を緩めるためのストレッチやエクササイズを行うことで、神経への圧迫を軽減することができます。以下は、柔道整復師が推奨する肘部管症候群に効果的なストレッチです。
・手首伸展エクササイズ
手首を反らせた状態で、反対の手でさらに手首を後方に引っ張り、20~30秒間保持します。これにより、前腕の筋肉が伸ばされ、神経への負担を減少させます。

・肘のストレッチ
肘をまっすぐ伸ばし、手を前に出した状態で手のひらを上に向け、反対の手で指先を引っ張ります。これも20~30秒間保持し、肘や前腕の筋肉を伸ばします。
これらのエクササイズを毎日数回行うことで、症状の改善が期待できます。
3.物理療法
物理療法も肘部管症候群の治療に効果的です。柔道整復師の指導のもとで行われる超音波療法や低周波治療は、神経周囲の炎症を抑え、痛みを軽減します。また、ホットパックやアイシングを使用して、炎症のコントロールと血流改善を図ることも効果的です。

4.装具の使用
装具を使用することで、肘の曲げすぎを防ぎ、特に夜間の神経への圧迫を防ぐことができます。スプリントは、肘が自然な位置に固定され、神経への負担が軽減されるため、症状の改善に役立ちます。
5.薬物療法
炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬が処方されることがあります。これにより、痛みやしびれが軽減され、日常生活での不快感が和らぎます。ただし、薬物療法は一時的な対処法であるため、根本的な治療には姿勢の改善やエクササイズが重要です。
6.手術(重度の場合)
肘部管症候群が重度で、非手術的な治療法で改善が見られない場合、手術が選択肢となります。手術には、神経の圧迫を解放するための「肘部管解放術」や、尺骨神経を移動させて圧迫を防ぐ「尺骨神経前方移動術」があります。手術後はリハビリが必要であり、数ヶ月にわたる回復期間がかかることがあります。
セルフケアの重要性
肘部管症候群の症状が軽度な場合は、日常生活の中でのセルフケアが非常に重要です。適切な姿勢を保つことや、定期的なストレッチを行うことで、症状の進行を防ぎ、神経への負担を軽減することができます。また、早めに柔道整復師や理学療法士に相談し、自分に合ったセルフケア方法を取り入れることが大切です。